恋の扉をこじあけろ
「よかったよ。琴乃が幸せそうで」
本気でそう言っているみたいで、涙が出そうだった。
わたしのことを想ってくれる、大切な友人。
強がりなわたしは泣き顔を見られるのがいやで、あわてて冷たいアイスクリームを飲み込んでこみあげてきたものをごまかした。
わたしがそんなことをしている間に、冬実はアイスクリームに突き刺してあった板チョコのかけらを指先でつまみとり、何かを思い出したらしくはっとした顔をした。
「琴乃!私たち、大変なことを忘れてたみたい」
大変なこと?」
何だろう、と首を傾げると、冬実はチョコレートのかけらを高く掲げた。
「バレンタインじゃん!」
言われて、はっとした。
そうだ。バレンタイン。
世の中にはそういうイベントがあるんだった。
しばらく関係なかったからつい忘れかけていたけど。