恋の扉をこじあけろ


「琴乃ちゃん、発見」


ひょい、と目の前に黒髪の男が現れて、条件反射で後ずさりした。


ま、松居先生…、なんでこんなところに。


的井先生には街中で会いたくてもなかなか会えないのに、なんでこの男に会うわけ?

神様のいじわる!


無意識にチョコの紙袋を後ろに隠したけど、松居先生は目ざとくそれを見つけた。


「お、何?それ」


「わたしのおやつです」


「もしかしてチョコ?俺に?」


「違います!」


手を伸ばしてきた松居先生から必死にチョコを守ると、手を引っ込めながらも松居先生は不機嫌そうな顔になった。


「バレンタインはお世話になった人にチョコを贈る日でもあるだろ?」


「そうですけど…」


「じゃあ、俺にくれないなんておかしい。俺は恩人なのに」


「恩人…」


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