恋の扉をこじあけろ
松居先生にピンクの可愛らしい紙袋は似合わない。
なのに、それをうれしそうに抱えているのがなんだか可愛かった。
「…今日はバレンタインじゃないですよ?」
「知ってる。俺はただ甘いものが欲しかっただけ」
「バレンタインの日にはどうせいっぱい貰うんだから、それまで我慢しておけばよかったじゃないですか!」
「我慢できなかった。それにお前は、的井先生に渡すだろ」
「当たり前です」
今日は先生のも買うつもりだったんだから。
結局買えなかったけど。
また先生に渡すチョコのことを考えていると、松居先生がじっとわたしを見てきていることに気づいた。
何だろうと松居先生を真っ直ぐ見ると、真剣な表情が返ってきた。
「的井先生、お前に何か言ってた?」
「何かって…?」
「言ってないのか」
「何かって、何ですか?」