恋の扉をこじあけろ
首を傾げるわたしを見て、松居先生は心なしか苦しそうな顔をしたような気がした。
「…そのうち、わかるよ」
松居先生はわたしの頭をぽんぽんと軽く叩いて、踵を返した。
「松居先生!」
「チョコ、ありがとな」
紙袋を掲げながらスタスタと歩いて行ってしまい、わたしは一人ぽつんと残された。
何だったんだろう。
何か言ってたかって。
そのうちわかるって…
足元から不安が忍び寄ってきて、それを振り払うようにさっと踵を返して歩き出した。
悪いことじゃないよね?
だけど、松居先生は苦しそうな表情をしてた…。
嫌な予感が浮かんでくるのを、わたしは頭の隅に追いやって笑顔で家の扉を開けた。