恋の扉をこじあけろ
バレンタイン当日。
わたしはバッグの中にチョコを隠し持ち、大学病院へ向かった。
結局手作りしちゃった。
ふふ。
渡したのがチョコだってわからないように、他の先生や衛生士さんの目を欺くためにキャンディみたいに包んでチャックつきのぬいぐるみのお腹に詰めてきた。
これなら先生のポケットに入ってても、チョコとは思わないだろう!
ぬいぐるみだとは思われるけど。
ていうか、バレンタインとっくに終わってるけど。
ドキドキしながら診察室へ行くと、いつも通り先生がわたしを待ってくれていた。
先生に会えたことがうれしくて小走りで駆け寄ると、先生はふい、とわたしから目を逸らした。
え…?
固まるわたしの手から、お預かりしますと言いながら診察表を抜き取って、さっさと歩き出してしまった。