恋の扉をこじあけろ
入ってきたのは松居先生で、松居先生はわたしと目があうと右手を軽くあげた。
「次回から担当です。よろしく」
力の抜けたわたしの手を取って、ぎゅっと握手してきた。
そしてすぐに的井先生にわたしの状態を聞き始める。
何度かわたしの顎に二人で触れることもあったけど、わたしはその間ずっとぼんやりしていた。
「では松居先生、よろしくお願いします」
「任せてください」
的井先生が頭を下げるとき、一瞬だけ目があった。
一瞬だったけど、長い間のように感じた。
「それじゃ牧原さん、お大事に」
去り際、先生はわたしにも挨拶してくれた。
「あ…ありがとう、ございました…」
なんとかそれだけ振り絞ると、先生は黙って離れて行ってしまった。