恋の扉をこじあけろ


本当はもっと言いたいことがたくさんあった。


これはどういうことですかとか、何でもっと早く行ってくれなかったんですかとか、その態度は何、とか。


だけど、わたしの頭は混乱ばかりしてその言葉をうまく作り出してくれなかった。


それに、ここで先生を問い詰めることはできない。


「松居先生…」


「ん?」


松居先生はそばに立っていた。


わたしは俯いたままだから、松居先生がどういう表情をしているのかはわからない。


「もう、帰っていいですか」


「…いいよ」


とにかく早く帰りたかった。


今この状況から早く遠ざかりたかった。


バッグを掴みとると、逃げるようにして診察室を飛び出した。

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