恋の扉をこじあけろ


電車に乗っている間も、ずっと頭が痛かった。


窓の外を流れていく景色を眺めながら、ぼんやりとつり革につかまっていた。


家に着くと、ただいまも言わずに部屋になだれ込み、ベッドに体を放り出した。



こういうことは前にもあった。


幸宏とさよならするとき。


手の先に力が入らなくて、何もしたくない。


ただ苦しみと悲しみと絶望感だけが、ぐるぐるぐるぐるとわたしの胸の中で暴れまわっている。



眠ろうにも眠れない。


目を閉じたら、先生の顔が浮かび上がってくるから。


これから先、しばらくは先生が夢に出てくることを覚悟した。

失恋したあとはいつもそう。


わたしは引きずるタイプだから。

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