恋の扉をこじあけろ
そう言って冬実は電話を切った。
わたしはぼんやりしながらも、冬実が残していった言葉に首を傾げた。
窓の鍵を開けておけって、どういうこと?
まさか、窓から入ってくる気なの?
まさかねぇ。
なんて思いながら言われた通り窓の鍵を開けておくと、冬実は本当に窓から侵入してきた。
いきなりパンプスを持った手が窓からひょいっと現れたとき、心臓が止まるかと思った。
「どうしてそこなの?」
「玄関じゃ、琴乃が移動しなきゃいけなくなるでしょ」
冬実は何食わぬ顔でカーペットの上に座って、一息つくとわたしを真っ直ぐ見てきた。
「一体どうしたの?」
冬実がいつになく優しい声で尋ねてくるから。
わたしの中で、何かが決壊した。
ぽろぽろ涙が溢れて止まらない。
最初はなんとかして止めようと努力したけど、嗚咽まで出てきて、終いには冬実に抱きついて大泣きしてしまった。