恋の扉をこじあけろ
「痛!」
がぶっと松居先生の指を噛んでやった。
松居先生は飛びのいて、指を摩りながら信じられないといわんばかりの表情でわたしを見た。
「お前な、ふつう噛む?」
「松居先生が優しくしてくれないからです!」
「コドモか!」
「的井先生はもっと優しかったもん…」
的井先生は、きっと気遣ってくれてたんだよ、わたしが「女の子」だったから。
治療しにくかったはずなのに…。
わたしが痛くないように、ちゃんとしてくれた。
たとえそれが、「歯医者さん」としての仕事のためでも…
しょげたわたしの頭に、松居先生がぽんと手を置いた。
涙目になっているのを知られたくなくて、うつむきながら目をそらした。
松居先生にはばれていたと思うけど。