恋の扉をこじあけろ


「今日、俺が仕事終わるまで待っとけ。的井先生のこと教えてやるよ」


ぱっと顔を上げると、にやりとした顔の松居先生と目があった。


「やーい、ひっかかったー」


「!?」


は!?


「だ、騙したんですか!?ばか!」


「騙してないよ。ちゃんと教えてやるよ」


「え?」


意味がわからない。


どこまでが本当で、どこまでが冗談なの?


「ちゃんと教えてやるから、ちゃんと診せろ」


またぐいーっとほっぺを引っ張り出してわたしの口内を診たあと、的井先生がしてきたように、顎の動きを診た。


そうやってしばらく真剣にわたしの状態を確認していて、珍しく真面目な表情をする松居先生に見とれそうになった。


松居先生は難しい顔をしながら、ゴム手袋をはずしはじめた。


「琴乃ちゃんさぁ」


「はい」


「正直に言うと」


「はい?」


「もう、開くだろ?」



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