恋の扉をこじあけろ


松居先生の言葉にわたしは固まった。


「開かないような気がするから、それ以上開けられないんだろ。怖いから。思い切って開けて見ろよ。もう人並に開くはずだ」


「……」


黙り込んだわたしに、松居先生はわたしに何かを投げてよこした。


「わ、わっ」


何とかキャッチ成功して、そっとそれを見て見ると。



黒くて四角いもの。


さ、財布?



「今日はこれで終わり。何か食って暇つぶしとけ」


「え。いいんですか?」


「いいよ」


「いくらか抜いちゃうかもしれませんよ?」


「いくら入ってるかわかってるし、必要以上に減ってたら請求するから」


松居先生はわたしに背を向けると、マウスをカチカチ鳴らしながらわたしに手を振った。



もう去れということなのかな。



バッグを手にとって、松居先生をちらちら見ながら診察室を出た。


それにしても抜かりない。


いや、そうじゃなきゃ財布なんか人に預けないか。

ていうか太っ腹?


せっかくだし、高いもの食べよう!

そうしよう!


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