恋の扉をこじあけろ
早速二階にあるカフェにまっしぐらしようとしたわたしの手を、誰かが掴んだ。
「きゃ!」
まさに歩きだそうとしていたわたしは、少し前につんのめってしまった。
もう、誰!?
不機嫌を顕わに後ろを振り向くと、女の子が立っていた。
見たことがある。
松居先生にいつも熱い視線を投げかけている実習生らしき子だ。
彼女はわたしを睨みつけたまま、わたしの腕を離してくれない。
それどころか、わたしの手首を握る手にぎゅっと力を入れてきた。
「いた…」
「どういうつもりですか?」
前に聞いた明るい声とは違って、低く、怒りを含んだ声だった。
「的井先生の次は、松居先生なんですか!?」
可愛い顔が歪んで、今にも泣き出しそうな顔になった。