恋の扉をこじあけろ



彼女も今、苦しい恋の中に立っている。


「あの…」


わたしが声をかけると、涙目で睨んできた。


彼女は睨んでいるつもりはないのかもしれないけど。


ここははっきり、誤解を解いておかなければ。


「わたし、松居先生のことが好きなわけじゃないですよ」


「え…?」


何を言っているのかわからないという風に眉を顰めた。


「あなたもさっき言っていたとおり、わたしが好きなのは的井先生だから…」


はっとした。


なんで、実習生なんかがわたしが松居先生を好きだって知ってるの!?


「ねえ!」


急に焦り出したわたしに、彼女はびくんと肩を揺らし、大きな目を見開いてわたしを見た。


「今から話できないかな?」


「え…話…?」


「だめか、実習中だもんね」


「今日の実習は、もう終わりですけど…」


「それじゃ、ちょっと話をしませんか?これから出すから!」


松居先生の財布を掲げると、彼女はきょとんとした。




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