恋の扉をこじあけろ
戸惑う実習生を引っ張って、食堂に連れ込んだ。
彼女が逃げ出す前にさっさと会計を済ませたらこちらのものだ。
うわ、我ながらわたし、タチ悪いことしちゃってる。
実習生はわたしが差し出したホットコーヒーを前に、もうあきらめの表情でバッグを隣の席に置いた。
お互いに軽く自己紹介をして、実習生の名前が戸山美香ということを知った。
名前を知ったところで、早速戸山さんのほうに身を乗り出し、本題を切り出す。
「どうしてわたしが的井先生のことが好きだってわかったんですか?」
周りの人に聞こえないように小声で尋ねたわたしに、戸山さんはコーヒーにミルクを落としながら苦笑いをした。
「そんなの、見ていたらわかりますよ。それに若い患者さんは少ないから、牧原さんは目だっていましたし」
「…バレバレだったと?」
「はい」