恋の扉をこじあけろ
「そうですね。男遊びが好きだとか、男性相手のバイトをしてるんだとか。とにかく、牧原さんは男を落とすのが得意だと…」
そんな噂が。
誰だろう、そんなとんでもない噂を流したの。
わたしのどこをどう見ればそんな女に見えるっていうんだろう?
色気とは中学生よりかけ離れているとよく冬実に言われるほどなのに。
ぴくぴくと口元をひきつらせるわたしをよそに、戸山さんはコーヒーを一口飲むと、話を続けてくれた。
「こんな誰かがやきもちで流したようなくだらない噂、聞き流していたんですけど…。松居先生が絡んでくると私、焦っちゃって…」
ぽっと頬を染めて俯いた戸山さんの背後に現れた人物を見て、わたしはげっ、と声をあげた。