恋の扉をこじあけろ
急いで立って手を伸ばしたものの、わたしの短い手では戸山さんに届くはずもなく、見事に空振りして戸山さんを逃がしてしまった。
早足で去っていく戸山さんの背中を名残惜しく見送ってから、すとんと椅子に腰を下ろした。
「せっかく、いいところだったのに!」
「何が?ナンパでもしてたの、お前?」
むっと口を尖らせてそっぽを向いた。
「的井先生のことを聞いてたところだったんです」
「へえ。なるほど。それに俺の財布を利用したわけ」
「たったの300円ですよ、ケチ!」
財布を松居先生に突き返すと、松居先生は財布の中身をちらっと確認してポケットに仕舞った。