恋の扉をこじあけろ
「開かない原因は人によっていろいろありますから、治療もいろいろ試していきましょう」
先生はもう一度わたしに口を開かせて、指を突っ込んだ。
先生の指二本分、わたしの口は開くみたいだ。
「もっとひどい人は、一本分も開けられませんから、牧原さんは軽いほうだと思いますよ。しかし、まあ…」
的井先生は、ゴム手袋をはずし、マスクに手をかけた。
「お寿司が難なく食べられるくらいにはなりたいよね」
露わになった先生の顔に、わたしは釘付けになった。
若い。
そして、かっこいい。
とりたててイケメンという風貌ではないけれど、恋遊びの相手には文句なし。
気がついたら、彼の手を握っていた。
「的井先生、よろしくお願いします!」