恋の扉をこじあけろ
「現実から目を逸らして、わずかな望みを糧に引きずるつもりだろ」
ブラックで飲めないから、砂糖をたっぷり入れておいたのにまだほろ苦い。
全部甘くなってくれればいいのに。
「そうですよ、だめですか」
「だめ」
当然のように言う松居先生に、じわじわと怒りがわいてきた。
カップを乱暴に置いて、松居先生を睨みつけた。
いわゆる逆ギレ。
こぼれたぞ、とテーブルを指さす松居先生に、ぼろりと言葉を吐きだした。
「松居先生は強いから!世の中にはいろんな人種がいるんです。ちゃんと乗り越えていける人とか、ゆっくりじゃないと乗り越えられない人とか!わたしはその後者なんです」
松居先生は黙って、こぼれたコーヒーをおしぼりで拭きながらわたしの話を聞いてくれている。