恋の扉をこじあけろ
恋をして





四月初め。



満開の桜が咲く街中を、リュックを背負って桜を見上げながら歩いた。


風に乗ってハートみたいな桜の花びらがひらひらと宙を舞う。



みんなが新しい生活に向かって、歩きだす季節。


一年で一番、街や山や公園が華やぐ時。


桜の枝の隙間から零れる陽射しすら愛おしくなる。



「琴乃?」



桜を見上げていると、後ろから声がかかった。


振り向かなくてもわかる。


この声は、冬実だ。


振り返ると、思ったとおり冬実がそこにいた。


最近はあんまり会ってなかったから、うれしくて冬実に飛びついた。


「冬実―!ひさしぶ…り?」


だけどその隣に、信じられない人物がいた。


冬実からその人に目を移した途端、驚きのあまり心臓が止まりそうになった。


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