恋の扉をこじあけろ
「ちょっと川崎さん、わたしのかわいい琴乃に手をあげないでくださいません?」
「えっ、あ、ごめん」
冬実がわたしに腕をまわして川崎さんを睨みつけると、川崎さんはおろおろして冬実に謝った。
冬実はそんな川崎さんを見て、冗談ですよ、と言ってふふっと笑った。
笑顔の冬実の横顔を、わたしは抱きしめられたままきょとんとして見た。
「私ちょっと琴乃と話をしたいから、川崎さん先に公園行っててもらってもいいですか?」
「あ、ああ、もちろん」
「ごめんなさい。すぐに終わるから、そんなに待たせないと思います」
「ゆっくりいいよ。桜見ながら待ってるし」
「それじゃあ、あとで」
ふふふと笑いながら、冬実が川崎さんに手を振ると、川崎さんは顔を赤くしながら公園のほうへ向かって行った。
遠くなる川崎さんの背中を見ながら、ふと思ったことを口に出す。