恋の扉をこじあけろ
夜、ベッドの上で枕を抱えながら大学病院でのことを思い返した。
そんなにお寿司が食べたいの?
と笑われた。
そうじゃないんだけど…、間違ってるわけじゃない。
食への苦しみから解き放たれたら、わたしはきっと幸せになれる。
的井先生はこの苦しみから、救ってくれるような気がした。
それに、お寿司が食べられるようになりたいねと言ったときの、先生の笑顔。
目じりが下がって、優しそうな笑顔だった。
いいんじゃない?
これ。
いい感じに恋が楽しめそうじゃない?
所詮、わたしたちの関係は担当医と患者。
それに素敵な笑顔と声を持っているから、他の患者さんやスタッフたちにモテるだろう。
どうせ恋したって叶わないし、モテそうな先生を慕う女がひとりやふたり増えたところで迷惑はかからないだろうし。
恋(遊び)しちゃっても、いいよね?
胸に生まれた暖かいものに、ふふっとにやけながら枕をぎゅっと抱きしめた。