恋の扉をこじあけろ
冬実は真面目な顔になって、わたしと向き合った。
聞かれるとは思っていた。
冬実はわたしのことを心配してくれるから。
わたしは頬を掻いて、ちょっとだけ俯いた。
「まだ、会えてないの」
「そうなの…」
冬実は気遣わしげな声でわたしの様子を窺ってから、そうだ!とぱちんと手を打った。
「川崎さんに、的井先生のこと聞いてみようか?どこにいるかくらい教えてくれるかもしれないし」
冬実ったら、それじゃあ『便利な川崎さん』じゃん。
ぷっと吹き出して、首を横に振った。
「いいの。ありがとう、冬実。気を使ってくれて。でも大丈夫だよ」
「でも…」
心配そうな顔をする冬実に、にっこりと笑顔を向けた。