恋の扉をこじあけろ
「的井先生は、自分で見つけにいくから」
冬実は黙ってわたしを見つめて、やがて微笑んだ。
桜の花びらがちらちらと散る。
わたしと冬実の髪にときどきくっつきながら、風に運ばれてどこかへ飛んでいく。
「また泣くようなことがあったら電話しなさいよ、待ってるから」
「いじわる!」
冬実は舌をちろりと出して、わたしの背中をバンバン叩いた。
「応援してるからなー!」
「わ、わわわ」
そのまま背中を突き飛ばされて、よろよろと前に数歩進んだ。
冬実はにっと笑うと、背中を向けて川崎さんの待つ公園へ歩き出した。
進みだした冬実と、止まったままのわたし。
桜並木に消えていく冬実が、なんだかいつもより綺麗に見えた。