恋の扉をこじあけろ
枝を駆使してなんとか頂上へ辿り着いた。
視界が開けて、目の前に街全体の景色が姿を現す。
この瞬間が一番好き。
それに今はここにわたし以外誰もいないみたいだし、この贅沢な景色を独り占めできちゃう。
さあっ、と爽やかな風が吹き、わたしの髪を攫おうとした。
同時に桜の花びらもふわふわと舞う。
風をもっと肌に感じたくて、そっと目を閉じたとき。
――カシャッ
はっ、として音のしたほうを見た。
わたしがいるところより少し下ったところにある広場のほうから聞こえてきた気がする。
わたしの他に、誰かいるんだ。
ちょっとがっかり。
せっかく、ここをひとりじめできたと思って浮かれていたところだったのにな。