恋の扉をこじあけろ


わたしが立っている隣の小さな茂みから、ガサッと何かが飛び出してきた。


プチ登山は好きだけど、虫は大嫌い。


瞬時にそれが大きなバッタだと理解すると、雄叫びをあげてその場から飛びのいた。


ついでに何かの植物の蔓に足を取られてずっこけてしまった。


「いたたた…」


いつ以来だろう、こけて膝を擦りむいたの。


中学生のときに体育祭でこけたときが最後だった気がする。


懐かしい痛みを感じながら膝を擦っていると、写真を撮っていた男性が駆けてくるらしき足音が聞こえた。


あれだけ大きな声を上げたら、そりゃ、気づくよね…。


今さら恥ずかしくなって俯いていると、男性の影がわたしの足先を覆った。


「大丈夫ですか?」


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