恋の扉をこじあけろ
本格的に笑い始めた冬実を再び睨みつけた。
「なんで笑うのよ!?こっちは真剣なのに!」
「だって笑えるから」
答えになっていない答えをくれた。
わたしはため息をつきながら、口のまわりにべっちょりとついた気持ち悪いケチャップをナプキンで拭った。
ケチャップだらけになって薄く赤に染まったナプキンをくるくる丸めていると、冬実の視線を感じた。
冬実はわたしの手を眺めながら、首を傾げた。
「病院行ってるんでしょ?治らないの?」
「それがさあ、先生の手におえないらしくて、大学病院に厄介払いよ。ほら、紹介状」
昨日、かかりつけの歯医者さんに貰ったばかりの、薄い水色の封筒に入った紹介状をテーブルの上に乱暴に出した。
汚れるから仕舞えと叱られて、すぐにバッグに戻したけど。
「来週行くの。やだなぁ、面倒くさい」
「何言ってるの。しょうがないでしょ、アゴが開かないんだから。治したかったら我慢しなさい」