恋の扉をこじあけろ



治療は月に一回のペースで行う予定だから、次に的井先生に会えたのは一ヶ月後だった。



番号を呼ばれて診察室に行くと、前のように入口で先生が待っていて、彼は診察表を受けとると、わたしを診察台に連れていった。

荷物を棚に置いて、ひょい、と診察台に腰をおろした。

先生がわたしの背後に立ったので、何だろうと思っていると、先生は何か水色のものをふわりと広げた。


「エプロンつけますね。失礼」


!!!



心の中で悲鳴をあげた。



先生自らエプロンつけてくださるなんて聞いてない!


心の準備ができていなかったわたしは、カチンコチンに固まった。


だけど内心では電車で美人の隣に座れたサラリーマンのように喜んだ。


先生の指を首の後ろに感じながら、顔が見えないのをいいことににやけていた。



先生はわたしの首の後ろでエプロンの紐を結び、わたしの長い髪を外に出すというサービスまでしてくれた。

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