恋の扉をこじあけろ

身を乗り出してパソコンの画面を覗き込むと、先生の予定表らしきものが表示されていた。

学会とかもあるんだ…


先生って、忙しいんだね。

わたしはヒマなのに。


「わたし、水曜日ならいつでも空いてますよ。その日は何も講義をとってないから休みなんです」


毎日大学に行くのが嫌で、そういう時間割を組んだ。

不真面目生活がこんなところで役に立つなんて。


へえー、と言いながら的井先生がゴム手袋をはずしはじめた。


「いいね。学生の特権だ。うらやましいな」


そう言いながら、先生は水曜日のところにカーソルをあわせ、マウスをカチカチ鳴らした。


「それじゃあ、一ヶ月後の水曜日。時間はどうします?午後からだったらいつでもいいけど」


「それじゃあ、14時で」


「わかりました。今日の診察はこれで終わりです」


マスクをはずし、わたしに診察表を渡した。


今日も素敵な先生を、しっかりと目に焼き付ける。


わたしは立ち上がって、先生にぺこりと頭を下げた。


「ありがとうございました」


「お大事に」


先生の笑顔と耳に心地よい声をお土産に、足取り軽く診察室をでた。


< 33 / 278 >

この作品をシェア

pagetop