恋の扉をこじあけろ
身を乗り出してパソコンの画面を覗き込むと、先生の予定表らしきものが表示されていた。
学会とかもあるんだ…
先生って、忙しいんだね。
わたしはヒマなのに。
「わたし、水曜日ならいつでも空いてますよ。その日は何も講義をとってないから休みなんです」
毎日大学に行くのが嫌で、そういう時間割を組んだ。
不真面目生活がこんなところで役に立つなんて。
へえー、と言いながら的井先生がゴム手袋をはずしはじめた。
「いいね。学生の特権だ。うらやましいな」
そう言いながら、先生は水曜日のところにカーソルをあわせ、マウスをカチカチ鳴らした。
「それじゃあ、一ヶ月後の水曜日。時間はどうします?午後からだったらいつでもいいけど」
「それじゃあ、14時で」
「わかりました。今日の診察はこれで終わりです」
マスクをはずし、わたしに診察表を渡した。
今日も素敵な先生を、しっかりと目に焼き付ける。
わたしは立ち上がって、先生にぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました」
「お大事に」
先生の笑顔と耳に心地よい声をお土産に、足取り軽く診察室をでた。