恋の扉をこじあけろ
「それで、今日はお弁当なの?」
いつもの学食で、めずらしく丼ものを食べている冬実が、めずらしくお弁当を持ってきたわたしを見て苦笑いした。
わたしは大きく頷いて、ぐっと手を握りしめた。
「そうよ。千里の道も一歩から。こつこつやっていけば、すぐに料理の腕はあがるはず!」
「あがらないでしょう、すぐには」
ばっさりわたしを切って、冬実はエビの天ぷらにかじりついた。
サクッという音がわたしを刺激する。
うう、美味しそう。
食べたい、けどあのエビはわたしの口には入らないし。
それに、わたしにはお弁当があるし…
視線を落とし、手元に広げたお弁当に目をやった。
初めて自分でつくったお弁当は、見事に『マズそう』な出来となった。
卵焼きは焦げてるし、タコさんウィンナーは失敗して足をいくつか切り落としちゃったし、おにぎりは握りが甘かったのかほどけてグチャグチャだ。
だけど、だけど!
いつか絶対美味しくつくれるようになるんだから!