恋の扉をこじあけろ
そんなわたしを見て、冬実は蔑むような表情から一遍して天女のような微笑みを浮かべた。
わたしはというと逆に怖くなって顔をひきつらせた。
冬実はだいぶ中身の減った丼を持ち上げると、ぱくりとご飯を食べた。
「ま、いいか。思ってたより順調に行ってるみたいで結構、結構」
最後は教授の口癖をまねした。
白髪頭のおじいちゃん教授で、可愛いから女子大生の人気者。
結構、似ている。
ご飯をかきこんだ冬実の唇はてんぷらの油でつやつや光っていて、色っぽい。
丼をドンとトレーの上に置くと、にっこりとわたしに笑顔を向けた。
「わたしは応援しているからね、琴乃。ちゃーんと、恋ができるようになるといいね!」
彼女の言葉に首を傾げつつ、今日はリップクリームを買って帰ろうと決めた。