恋の扉をこじあけろ


「ぶッ」

「きゃあ!」


思わず水を吹き出してしまった。


「何してんのよ、もう!汚いなー」


冬実がドン引きしながら差し出してくれたおしぼりで口を拭きつつ、ある方向を指し示す。


「あ、あれ、あの人」

「ん?」


冬実はわたしが指し示したほうを振り返って、首を傾げた。


「あの男の人がどうしたの?」


わたしは冬実のほうに身を乗り出して、ひそひそ声で言った。


「先生なの。わたしの、担当の」


「マジ?」


冬実は目を丸くしてもう一度振り返った。

そこには的井先生が、友人らしき男の人と一緒にいた。


何度目をこすってみても的井先生だ。

わたしの妄想でも、見間違いなんかでもない。


うん、いる。




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