恋の扉をこじあけろ

「エプロンお付けしますねー!」


そういうなり、彼女はもたもたとわたしにエプロンをつけはじめた。

衛生士さんなのかと思ったけど、想定する年齢とこのもたつき具合からして、学生かもしれない。


でも、今までこんな人付いたことなかったのに。


ちらりと後ろを見ると、いつもより若い女の子たちがたくさんいて、それぞれ何やら作業している。


実習っていうやつだろうか。


それにしても、わたしの楽しみのひとつだったエプロンタイムを奪われて肩を落とした。


だけどこれはまだ序の口だったのだ。


「歯磨きしますので、椅子倒しますねー」


彼女の明るい声とともに、診察台は倒された。


しかも、なんかきつい角度に。


「……あの」


的井先生があわてて角度を調節して、楽な角度にしてくれた。



目の前にある照明を見つめながら、わたしは悟った。


ああ、今日は練習台にされるんだ、と。



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