恋の扉をこじあけろ

そのテレビで、『お昼の体操』が始まった途端だった。


室内にいたお年寄りの患者さんたちが、一斉にテレビに合わせて体操し始めたのである。


わたしはひぃっとバッグを抱えこんで、キョロキョロ見回した。

前も後ろも、隣にいたおばあさんまで、みんなして体操している。


綺麗に同調した動き…。


なんだかおかしくなってきて、吹き出しそうになった口をあわてて押さえた。


やばい、おかしすぎて震える…っ


『1928番の方、第2診察室へお越しください』


窮地に陥ったわたしを、電子呼び出し板が可愛らしい女性の声で救ってくれた。


これ幸いとバッグを抱えこんだまま、黙々と体操を続ける集団の中から飛び出して、診察室へ逃げこんだ。


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