恋の扉をこじあけろ
ここからはいつも通り、的井先生が診察してくれたけど、先生の態度はいつもと違う。
なんだか最初のころに戻ってしまったみたいだ。
…もしかして、実習生の女の子がいるせいなのかな。
「はい、口を開けてください」
言われた通りに口を開けながら、甲斐甲斐しく先生の助手をする女の子を盗み見た。
くるっとした目、
長い髪、
ピンク色の頬。
子鹿みたいに可愛い。
それにさっき、いい香りもした。
マスクをしているせいで本当の顔はよくわからないけどーーー
そこでわたしの脳内に、過去の映像が蘇ってきた。
あれは確か、的井先生の二回目の診察の後……
廊下ですれ違ったあの女の子。
そっくり。
香りも一緒。
あのときの女の子は、この子なんだ。