恋の扉をこじあけろ

ここからはいつも通り、的井先生が診察してくれたけど、先生の態度はいつもと違う。

なんだか最初のころに戻ってしまったみたいだ。


…もしかして、実習生の女の子がいるせいなのかな。


「はい、口を開けてください」


言われた通りに口を開けながら、甲斐甲斐しく先生の助手をする女の子を盗み見た。



くるっとした目、

長い髪、

ピンク色の頬。


子鹿みたいに可愛い。

それにさっき、いい香りもした。


マスクをしているせいで本当の顔はよくわからないけどーーー


そこでわたしの脳内に、過去の映像が蘇ってきた。


あれは確か、的井先生の二回目の診察の後……


廊下ですれ違ったあの女の子。



そっくり。


香りも一緒。


あのときの女の子は、この子なんだ。




< 80 / 278 >

この作品をシェア

pagetop