恋の扉をこじあけろ
「今日はこれで終わりです」
的井先生の声にはっと我に返った。
いつの間にか照明も消されていて、実習生はわたしの左後ろに控えているのが気配でわかった。
先生はスプリントをわたしに手渡す。
「次の予約は、一ヶ月後だね」
先生はわたしに背を向けて、パソコンで予約をいれた。
わたしの名前が、カレンダーみたいな表に記入された。
「いつも通り、水曜日に。……あ」
「どうされました?」
先生が何かに気づいたような声をあげて、パソコンの調子が悪いと思ったらしい実習生が近寄ると、先生は首を横に振った。
「何でもない。それじゃあ牧原さん、お大事に」
はい、と返事をして立ち上がり、先生にいつも通りお礼を言った。
実習生にも、ありがとうございましたと言うと、彼女はにこりと笑った。
「お大事にー」