恋の扉をこじあけろ
いつもならプリンやケーキが置いてあるところは、見事にすっからかんだった。
ここに来てこの仕打ち。
この世は神も仏もないのか。
がっくりと肩を落としたとき、混雑したコンビニの中で急に誰かがわたしの腕を引っ張った。
「きゃ」
我ながら女の子らしい声!
家で虫を見つけたときの悲鳴は人様に聞かせられないのに。
って、そうじゃなくて。
誰?!
わたしは腕を強く引っ張られて、そのまま外へ連れ出された。
人ごみから抜け出して、わたしを連れ出した犯人の姿が露わになる。
男の人だ。
知らない、人?
怖くなって勢いよく手を振り払う。
「な、何か用ですか!?」
声が震えてしまった。
まわりの人が不思議そうにこちらをちらちら見る中、男の人は動揺することもなくゆっくり振り返った。
「ごめんごめん、びっくりした?」
彼は謝りながら、わたしに近づく。
わたしは違和感を感じながら後ずさりした。