恋の扉をこじあけろ
「なんでそんなこと聞くんですか?」
「俺もここに通ってるから的井先生のことは知ってんだよ。そしたら君が楽しそうにしてるの見たから」
「だからって、あなたには関係ないですよね」
男の人はジャージのポケットに手を突っ込んで、にやりと白い歯をのぞかせた。
「だって面白いじゃん。患者と担当医の恋?いいネタだ」
ゾクリ、と背筋を冷たいものが走り抜けた。
この人は何をしたいんだろう。
いいネタ?
もしかしたら的井先生のことが嫌いなのかもしれない。
変な噂を流して、陥れるつもりなんじゃ…
そんなことになったら、的井先生は。
「こ、恋遊びです!」
咄嗟に、その言葉が口をついて出てしまった。
案の定、男の人は意味がわからないというように眉を寄せた。
「恋遊び?」
「こ、恋ができないから。わたしが勝手にしてるだけで…!本気…なんかじゃ…」
声が震えて、喉の奥が苦しい。
なんでこんなに苦しいんだろう…
「琴乃!」