恋の扉をこじあけろ
去って行く背中を見つめながら、呆然とした。
結局、何だったんだろう。
治療サボって先生に連れ戻されてるみたいだけど。
琴乃、と呼ばれて振り返る。
「琴乃、ごめんね。もう琴乃に変な男は近寄らせないからね!」
真剣な顔で言われたけど、わたしの頭は混乱真っ最中だ。
「冬実、なんでここにいるの?」
スクーリングに行っていたはずなのに。
冬実は苦笑して、手元のスーツケースをちらりとみた。
「謝りたくて…こっちに帰ったら一番に琴乃のところに行こうと思ってたの」
一番って。
家にも帰らずに本当に一番?
もしかしてわたしを真っ先に探してきてくれたのかな。
嬉しいのとおかしいのとで、わたしはぷっと吹き出した。
「ありがとう冬実。ここじゃなんだから、別のところに移動しよう?」
手伝うよと言って冬実の手からスーツケースを取り、二階の食堂に移動した。