恋の扉をこじあけろ
「こんにちは、牧原さんですねー。…どうしたんですか?」
腹を抱えて笑うわたしを、若い先生が不思議そうに見た。
「な、なんでもありません!ふふっ」
笑いながら、ちょっと引いている衛生士さんに荷物を預けると、誘導されるままに診察台に座った。
衛生士さんにエプロンをかけてもらって、ようやくわたしの笑いがおさまった頃、先生がアゴの状態を聞いてきた。
「夏頃から調子が悪い、ということですね。今はどのくらい開きますか?」
頑張って開くところまで開けてみせると、先生は物差しみたいな器具で開き具合を計測してメモをとった。
そして首を傾げる。
「痛みはあります?」
「いえ、痛みはないです」
「痛みはない、うーん」
先生はわたしの顎関節に手を当てて、上下に動かすよう指示した。
言われた通りに動かすと、先生はしばらく動きをみてから、また首を傾げた。
そして助けを求めるようにして隣のブースにいた先生を呼んできた。