恋の扉をこじあけろ

「でも、どうしてわたしがここにいるってわかったの?」


診察の日がいつだなんて教えてはいないから、冬実は知らないはずなのに。


「今日は水曜日だし、月末だし。もしかしたら診察日かもしれないと思って」


冬実はチョコレートケーキにフォークをいれながら、なんてことないように言った。



なるほど、さすが冬実。

だから大学病院に来てみたんだね。

案の定、わたしはここにいたし。


納得しながらクリームソーダに浮かんでいるアイスクリームをスプーンでつついた。

炭酸がシュワシュワという音をたてながら、楽しそうに緑のプールを泳いでいる。


冬実は黙々とチョコレートケーキを崩していたけど、ひとつ息をつくとフォークを置いた。


「この前は、本当にごめんね。実は、わたしがあの人たちに頼んでおいたの」


わけがわからなくて首を傾げた。


冬実はこの前のナンパのことを言ってるんだよね?


冬実が頼んでおいたって、どういうこと?

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