恋の扉をこじあけろ
恋。
これは嘘の恋。
ちょうどクリームソーダに使われている、人工甘味料みたいな。
本当の恋じゃ…ない。
黙ったままメロンソーダを見つめているわたしを見て、冬実は口に運びかけたケーキをピタリと途中で止めた。
「まさか…本当に好きなの?」
わたしは首を横に振る。
「…違うよ」
それを聞いて安心したように、冬実はチョコレートケーキを食べた。
「よかった。叶わない恋で、琴乃に苦しんでほしくないの」
冬実はわたしのことを心配してくれている。
「どう考えても無理なんだから、割り切ってるし。心配しなくても大丈夫」
安心させるために肩を竦めておどけて言うと、冬実はふふっと笑った。
「先生で楽しむのもいいけど、本当の恋もしなさいよ。さっきの人、やっぱりだめなの?」