恋の扉をこじあけろ
さっきの人というのは、恐らくタカノリと呼ばれて連れていかれた人だ。
いきなり絡んできて失礼な質問を投げかけてきたくせにさっさとどこかへ行った人。
わたしはブンブン首を横に振った。
あり得ない。
絶対に無理、まだ。
第一、わたしはああいうタイプが苦手だし。
わたしの反応に冬実はつまらなそうにテーブルに肘をついた。
「さっきは怪しいなんて言っちゃったけど、結構かっこよかったじゃない。わたしだったら絶対…」
「嫌だよ…」
わたしが眉を下げたのを見て、冬実も困った顔をした。
「いつまで過去に縛られてるつもり?」
「わかんないよ…」
クリームソーダはだいぶ氷が溶けて薄くなっていた。
ストローをまわすと、かろうじて残っていた氷がカランと涼しげな音をたてた。
冬実の言葉がわたしの意識を過去に引き戻す。
ストローをまわし続けながら、わたしはそっと目を閉じた。