恋影




「なっ…!」


「だから、人を殺しまくってから、その刀を探しだし、そん娘に握らせて戦わせてから、殺すと言うんか…?!」


「それはこの娘の腕次第だ。力があれば、我ら会津の力となるからな…ククク……。」


「なんちゅう奴らじゃ…!そんな者に薫子ちゃんは絶対に渡さんぜよ!!武市、行くぞ!!」


二人は同時に地面を蹴り上げ、相手に襲いかかった。


狙いは薫子だ。


他の者達を刀で威嚇しながら、薫子を抱いている者だけを狙って刀を振るっていく。

「ぎゃあっ!」


「ぐえっ!」


龍馬が迫ってくる敵に峰打ちをくらわせる。峰打ちとはいえ、龍馬の業は適格で相手に隙を与えずに打ち込んでいく。


その間に武市は、龍馬の間をすり抜け、薫子を抱えている者に刃を交えていた。


「くっ……!」


「……っ!」


さすがに、それだけの実力はあるようだ。なかなか隙が出来ない。


こんなことをしていたら、刀が薫子に当たってしまうかもしれない。薫子に相手の刃と自分の刃が向かないように、刀を啄む。

「はっ!」


「うっ……!」


相手は片手だ。武市は相手の腕を狙い、怯んだ隙に、急所を打ち抜く。


「ぐえっ…!」


首元から血を吹き出しながら、その者は絶命し、薫子は腕から放り出され、地面にたたきつけられてしまう。


「薫子!!」


慌てて薫子に駆け寄り、その身の安否を確かめる。


「薫子!薫子…!!」


必死に揺すり起こす武市。


すると、横の茂みから何かが飛び出してきて、武市を地面にたたき付ける。


「うっ…!……薫子!?」


見てみれば、そこには縄で縛り上げられていた薫子がいた。


と、いうことは……、


起き上がって、薫子だと思っていた者を見ると、小刀を持った子供のような体形をした者だった。


「!!」


その刃先には赤い血が、少しだけ付着していた。武市はその後を手でなぞると、首筋にいつ付けられたのか分からなかったが、わずかに血が出ていた。


つまり、あの者は影武者で武市達を殺そうとしたのだ。それを、本物である薫子が助けたのだった。


あと一歩遅ければ、武市の命はなかっただろう。


すると、我に返るように龍馬の声が響く。


「武市ーー!!早く、薫子ちゃんを連れて逃げるんじゃーー!!」


相手を防ぎながら、逃げるように言う龍馬の姿が目に映る。


「龍馬さん!!」


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