恋影



「ああっーー!!なんてことを!!」


その場にいた姉各の者達が悲鳴を上げ、その場は騒然となってしまう。


明美はとっさに白鳴を自分の後ろへと避難をさせるが、その場から動けずにいた。


「大丈夫でございますか!?火傷はされておられませんか!?」


「何をしているのお前達!さっさと、水を持ってきな!!」


「は、はい…!」


妹各の者達がバタバタと廊下を走って行く。姉各の者達は、その男の着物を手ぬぐいで拭いていく。


「………っっ!!この女!こっちへ来い!!」


「!」


男は怒りまかせに、白鳴に手を出そうとする。


「お止め下さい!!」


すかさず明美が間に立つ。


「なんだ?俺に意見しようってんのか?退け!!」


「明美!」


「……どきませぬ!この娘は私の妹でございます!!それに、この者はそう出来ないと申したはずです!場をお慎み下さいませ!!」


「この女……、俺に意見をするとはいい度胸じゃねえか…。殺されてえのか!!」


「明美!!」


周りで悲鳴を上げる芸妓達。男はますます怒りをおぼえ、明美の胸倉につかみ掛かる。


「お客様!お止め下さい!!相手なら私がいたします!!」


「明美!早く謝って……!」


「白鳴!!なんてことをしたんだい!!今からでも、お相手をすると言いなさい!!」


「お客様!どうかお許し下さい…!!」


皆必死になって男をなだめようとする。本当に殺されてしまう芸妓だっているのだ。早く収集を付けないと、本当にまずいことになってしまう。


中には泣き出す者までいるが、白鳴と明美は決して意思を曲げずに、相手を睨みつけていた。


「……っ!」


絶対にこびないと悟ったのか、男の顔色が変わる。


「……なるほど、いい目をしている。こんな女を斬るのは勿体ないが、俺を侮辱する者は許せん…!この者を庭に引っ立てろ!!」


「!!」


周りにいた男の仲間が、二人の脇を抱え表へと連れだしてしまう。


「何事でございますか!?」


騒ぎを聞き付けた店の主である大夫が、他の女達を引き連れてやって来る。


「うるせー!退け!!この無礼な女共を斬って晒し首にしてやる!!」


「それは失礼をいたしました。が、しかし、そのようなことは酒の席で起きたこと。そのような者を斬っても、名が汚れるだけですわ。」


「なんだと!この俺様に説教するきか!?」
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