恋影
「ここは京の都を管理する島原です!侮辱が許せぬのなら、きちんと手順をお踏みになって頂きたい!!」
「なんだと!?こいつらもやっちまえ!!」
一勢に男達が襲い掛かってくる。しかし、主が手軽に男達を薙ぎ倒して行く。
「ぐっ……!!」
男達も酒が回り過ぎて、上手く身体がついていかないようだ。
あっという間にやられてしまい、玄関の外へと出されてしまう。
しかも、運が悪いことに見回りの兵士達に見つかり、追い回されるはめとなってしまった。
なんとも情けない姿である。
一方、事の一件は重大なことであり、客の気分と妹各のしつけを怠ったとして、明美は謹慎処分となり、白鳴は土間に出されて、また下働きとなってしまった。
着物を着替えて、せっせと炊事と甘露梅作りに励むのであった。
「白鳴ちゃん。」
「……?」
訪ねて来たのは、同じ妹各の者である。とくに何をするでないので、普通に接していた。
「……実はお菓子がきれてしもうてな。あったら、欲しいんやけど……。」
手にはお客様用の小鉢が握られており、白鳴とは違い、綺麗な手をしていた。
「……戸棚にあると思う。ちょっと待って。」
戸棚を開けてお菓子がないかを確かめる。
「……これ、全部白鳴ちゃんが漬けとるん?」
山のような梅を見て言っているのだろう。
「そう……。……あ、ないわ。お菓子きれてるみたい。」
「えっ!ど、どうしよう…!必要なのに……。」
そんなこと白鳴に言われても困る。オロオロと困った仕草をする。これも、ちゃんと稽古をされている証だ。
稽古をしたいが、今の白鳴にそんな余裕はない。
「……分かった。私が後で買っておく。」
「本当!?」
「うん。」
「ありがとう!じゃあ 私この後稽古だから、これよろしくね!!」
嬉しそうにして、小鉢を置いて出て行った。
「……稽古か……。」
置かれた小鉢を手にし、行った方向を見つめる。
今頃、皆自分達の姉各の者に稽古をつけてもらい、練習に励んでいるのだろう。
それに比べ、自分は……、
「…………。」
誰も白鳴に声をかける者も、庇う者もいない。
ただ、虚しく鍋の蒸気だけが返事をしていた……。
白鳴は約束通りに、お菓子を買うために町へと出ていた。