恋影
桂は持ってきていた紙の束を見せる。どうやらずっと、白鳴を捜している人がいないか、捜してくれていたようだ。
「迷子なら、必ず届けられるからね。」
「桂さん、ありがとうございます。」
「カッーーー!!」
「?」
いきなり高杉が叫び声を上げる。
「……まったく、お前は本当にいい女だな!こんな所に納めておくのが、もったないぐらいだ!!どうだ、長州藩邸に来ないか?不便はさせないぞ?!」
「高杉さん、待つぜよ!白鳴さんの世話をするのは、ワシらの役目じゃ……!」
「そうッスよ!勝手なこと言わないで下さい!!」
高杉の誘いを猛反対をする龍馬と中岡。
「何を言ってやがる!恩人のために、女を捨てて男装して刀を握る……!そんな女が他の何処にいるって言うんだ!!こいつは、長州藩邸へ連れていく!そして…、俺の嫁にする!!」
「はっ…!?」
「な、ななっ…!!」
「……っ!」
「あらら……。」
高杉の爆弾発言に、桂以外皆の表情が固まる。
今、嫁にすると聞こえたような……。
硬直してしまう白鳴。
だが、高杉は本気のようだ。
「小五郎!こいつにもっといい着物を着せて、藩邸に持って帰るぞ!!」
「ちょっと待つぜよ!!そんな話し絶対認めんぜよ!!」
「そうッスよ!!そんなことをしたら、姉さんに迷惑ッスよ!!」
「それもそうだね。」
「嫁にするしないはともかく、長州藩邸へ連れて行くのなら、彼女の意見をまず聞くべきだと思うが……?」
「た、武市さん……!」
なんでか、とんでもない方向へと話しが飛んでしまっている。戸惑う白鳴。
「何を言う!この俺様の嫁になるのだ!不満などあるまい!なあ、白鳴!」
自信満々で白鳴に尋ねる高杉。
「……絶対に嫌です!」
「即答だな!?もっと考えろよ!!」
考えるも何も、そんなことをするために、わざわざ男装までして、町へ出てきたのではない。むしろその逆だ。
「アハハハ…!こりゃー景気よく振ったのう!」
「見事です 姉さん!」
「まあ、当然の結果だね。晋作、今日の所は諦めてまた、来たらいいじゃないか。」
ポンポンと高杉をなだめる桂。だが、高杉は諦めてはいなかった。
「白鳴!俺の嫁になれ!!」
「嫌です!!帰って下さい!!」
「俺の何処が気にいらん!?」
「その横暴さです!」