恋影
隊士の一人が斎藤に尋ねる。
「相手は女だ。女が岡田と関わることはまずないだろう。それよりも、このいったいをくまなく捜すぞ。」
「はい!」
斎藤率いる三番組は先を進んで行った。
怪しまれずに道を通り抜けると、町通りと出る。安全な場所と言っても簡単に見つけられる場所ではない。
すると、沖田が一人で町中を歩いているのが見えた。どうやら周りには、他の隊士はいなさそうだ。
一人で何処に行くのかと思い、白鳴はその後を追いかけた。
沖田は路地裏へと入って行く、白鳴もその後をついて行く。通りを抜けたところで、沖田を見失ってしまう。
「………!」
何処へ行ったのだろうか…?白鳴は辺りを見回しながら歩く。
すると、腕を掴まれ引きずり込まれる。
「……!!」
喉元には刃が突き付けられ、身体の自由がきかなくなり、動くに動けなくなってしまう。
「……白鳴ちゃん?」
「……!」
聞き覚えのある声がし、ゆっくりと振り返ると、そこには沖田がいた。
「沖田さん。」
「まさか、僕の後をつけていたのが、君だったとはね。少し意外だったかな。」
「気づいてたんですか?」
「うん、だって君の気配は分かりやすいからね。」
「………。」
不覚…!これでは、敵の尾行とかは絶対に無理だ。白鳴は自分の不甲斐なさに落ち込むも、沖田にこうして会えて良かったと思っていた。
「それで、今日はどうしたの?」
「……!」
こんな所にいては不自然すぎる。とはいえ、以蔵を探していたとも言えない。
「じ、実は……その、道に迷ってしまって……。それで、沖田さんを見かけたので……。」
「……それで、何処へ行くつもりだったの?会ったついでに、案内してあげてもいいんだけど。」
「……お茶屋さんです。この近くに美味しいお菓子が売ってあると聞いたので……。」
仲間を守るためとはいえ、白鳴は沖田に嘘をついている。
なんだか、胸が締め付けられるように痛い……。
「うーん……。この辺りには、いっぱい美味しいお店がありからな……。」
首をかしげながら少し考え込む沖田。
「あってるかは分からないけど、案内だけならしてあげるよ。」
「え……?」
「僕もちょうど食べたかったし。」
にこりと笑う沖田。
本当は違う……。白鳴が捜しているのはお茶屋さんではない。