目の前のオトコ

彼氏は仕事熱心だ。


寡黙でこの男とは正反対のタイプ。


そんな姿が好きで付き合いだした。



けど・・・




『仕事が入った』



いくら会う約束をしてもドタキャンの繰り返し。


忙しいのはわかる。



ただ、昔はどんなに忙しくても会ってくれていたのに--





「ねぇ--」



ふと名前を呼ばれたと思ったら、そっと手を重ねられた。





「えっ・・・」



思わずドキッとする。


華奢な手だと思っていたが意外に大きくて角ばっていて…


男の手だった。





「お礼…させてよ」


「お礼って・・・」



この男にはさっきまでの作り笑いはもうない。




目の前にあるのは--獲物を狙う獣の顔。





「あんたを満足させてやる」


そう囁かれながら手を撫でられる。





ふざけんなっ・・て手を引けばいいのに。



そう冷静に考える自分がいるのに、私は手を絡めた。





Fin.

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