あい、してた。
ナカノはジーンズのポケットに突っ込んだ手を出そうとせずに、真顔で首を振った。
『いらねーって。マジで。』
あたしも引き下がるわけに行かない。
『おごってもらう理由がないよ。観てもいいかなって思ったから来たんだし。自分の分は払いたいし。』
しばらく、『いいよ』『払うって』のやりとりの後、またナカノが渋々折れた。
『サエジマって、ちょー頑固。』
お金を財布にしまいながら、ナカノが苦笑いした。
悪かったね。
って言い返そうかと思ったけど、
せっかく折れてくれたナカノを困らせると悪いから、やめた。